「世界最高峰の繊細さを誇る和食が、なぜ入っていないのか」という疑問は絶えない。その理由は、概念が形成された時期と、食文化が目指す方向性の根本的な違いにある。かつてヨーロッパで食文化の分類が進められた時代、日本は長きにわたる鎖国政策から明けたばかりであり、国際的な外交宴席での知名度は限定的だった。
さらに重要なのは調理の思想だ。フランス料理や中華料理、トルコ料理が「素材に手を加え、複雑なソースやスパイスで新たな味わいを創出する技術」を極めたのに対し、和食は「素材そのものの持ち味を削ぎ落としながら引き出す技術」に特化してきた。また、2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで証明された通り、近代の国際社会における評価基準は従来の「三大分類」から、地域独自の持続可能な食文化を保護する方向へと確実にシフトしている。