多くの奏者を悩ませるのが、第3オクターブを超える高音域のトリルだ。例えば、高音EからF#、あるいは高音FからGへのトリルは、通常の運指では指が複雑に交差するため、物理的に素早い反復が極めて困難になる。ここで効果を発揮するのがプロ秘伝の替え指テクニックである。
高音E-F#のトリルでは、右手の特定のレバーキーを活用することで、左手の複雑な動きを省き、右手指一本の小さな振幅だけで鮮やかなトリルを表現できる。また、高音G-Aのトリルにおいても、足部管のキーをあらかじめ解放しておくことで、音色を損なわずに安定したピッチと素早い指動きを両立させることが可能だ。これらの運指パターンを一覧で把握し、身体に染み込ませることが、難曲攻略への確実なショートカットとなる。
さらに、音色改善の観点からも替え指のメリットは大きい。トリル中の音量が不安定になったり、音がかすれたりする原因の多くは、指の余計な力みが息の圧力(アンブシュア)に悪影響を与えていることにある。替え指によって指先が脱力できれば、喉が開き、響き豊かな美しい音色を維持したまま鮮やかな装飾音を奏でられるようになるのだ。