別れを切り出す側であるにもかかわらず、なぜ相手は最後に紳士的で思いやりのある態度をとるのでしょうか。恋愛心理の臨床データおよび行動分析から見えてくるのは、最後の優しさにおける男性心理の複雑な構造です。
最大の動機として挙げられるのが、「悪者になりたくない」という強烈な自己保身欲求です。心理学において、他者に苦痛を与える行為(別れの宣告)を行う際、人は強い認知的不協和と罪悪感に苛まれます。その精神的負荷を中和するために、「自分は最後まで誠実に向き合った」「相手を傷つけないよう最大限配慮した」という自己正当化のストーリーを無意識に構築しようとします。つまり、差し伸べられた手は相手のためではなく、自分自身の罪悪感を減らすための免罪符として機能しているのです。
さらに、男性特有の承認欲求や独占欲も影を落とします。「別れた後も『良い男だった』と美化された記憶を残したい」「完全に自分の手の届かない存在になってしまうのは惜しい」という、振る側の無意識の利己心が、別れ際の中途半端な温もりを生み出します。振られた側がその温もりに縋り付いてしまう構造こそが、この現象の根深い問題点といえます。