多くのファンが疑問に思うのが、「いつから、なぜ髭を生やし、ワイルド路線へシフトしたのか」という点です。その明確な分岐点となったのが、2006年のドラマ『白夜行』と、2007年の映画『クローズZERO』でした。
2006年の『白夜行』(TBS系)では、再び綾瀬はるかさんとタッグを組み、自らの過去を隠すために罪を重ね続ける青年・桐原亮司を演じました。この作品で山田さんは、従来の爽やかさを完全に封印し、底知れぬ孤独と冷酷さを宿した「闇の表情」を確立します。精神的に極限まで追い込まれる役作りの過程で、俳優としての自我に大きな変革が起きたと当時のインタビューでも語られています。
そして決定打となったのが、三池崇史監督の映画『クローズZERO』(2007年)における芹沢多摩雄(せりざわたまお)役でした。鈴蘭男子高校の頂点に君臨する「百獣の王」を演じるにあたり、山田さんは筋肉を増量し、髪を伸ばして無精髭をたくわえた風貌で登場。圧倒的な強さとカリスマ性を放ち、それまでの「美少年・山田孝之」のイメージを完全に粉砕しました。
髭を生やし、外見をガラリと変えた実質的な理由について、山田さんは後にテレビ番組や手記の中で「美男子や好青年の枠に縛られたままでは、演じられる役の幅が狭まってしまう」「容姿ではなく、役そのものとして画面に存在したい」という強い危機感と矜持があったことを明かしています。彼は世間から与えられた「イケメン俳優」という記号を、自らの手で意図的に脱ぎ捨てたのです。