いざ病院へ連れて行こうとした際、親を悩ませるのが診療科の選択です。肘内障は何科を受診すべきかという問いに対する結論は、「整形外科」が第一選択となります。
ここで知っておくべきは小児科と整形外科の違いです。小児科は子供の病気や発育全般のエキスパートですが、運動器(骨・関節・靭帯)の徒手整復に関しては医師の経験値にばらつきがあります。小児救急を標榜する総合病院の小児科医であれば肘内障の整復に手慣れているケースも多い一方、一般クリニックの小児科では「骨折の除外診断ができないため整形外科へ行ってほしい」と紹介状を出されるケースも珍しくありません。対して整形外科は、骨と関節の専門家であり、数秒で整復を完了できる技術と、万が一骨折だった場合に即座にレントゲン撮影やギプス固定を行える設備を備えています。
また、整骨院(接骨院)の柔道整復師も肘内障の整復(後療)を行う法的な資格を持っています。近隣に整形外科がなく、かかりつけの整骨院が対応可能な場合は選択肢に入りますが、レントゲン撮影による骨折の鑑別が法律上できない点には留意が必要です。
保護者が最も判断に迷うのが、夕方以降や休日に発症した場合の夜間救急外来の受診目安です。夜間当直医が内科医や外科医の場合、肘内障の整復に慣れていない医師が当直を担当していることもあります。受診の是非は、子供の様子を観察して以下のように切り分けるのが臨床的に妥当です。
- 夜間救急へ直行すべき状態:安静にしていても泣き叫んで眠れない、患部が明らかに腫れている、打撲や高所転落が原因である、手先が冷たくなっている・紫色に変色している(血流障害の疑い)。
- 翌朝の整形外科受診で問題ない状態:腕を動かさないものの泣き止んでおり、絵本やテレビを見て落ち着いている、授乳や水分補給ができ、そのままスヤスヤと眠りについた。
肘内障自体は、靭帯が骨に少し挟まっている状態であるため、数時間から半日程度外れたままであっても壊死や永続的な後遺症を残すリスクは極めて稀です。痛がって一睡もできないのであれば夜間救急(または小児救急電話相談「#8000」で整復可能な当直医を案内してもらう)を利用すべきですが、子供が眠れているのであれば、無理に深夜の救急外来で長時間待たせるよりも、翌朝一番に日本整形外科学会専門医のいるクリニックを受診する方が母子ともに負担が少なく済みます。