トリミング料金の高騰やサロンの受け入れ拒否を背景に、動画サイト等で「猫ライオンカット自宅やり方」を検索し、セルフカットを試みる飼い主が急増しています。しかし、これは現場の獣医師が口を揃えて「最も危険な行為」と警告する重大な盲点です。
犬の皮膚と比べ、猫の皮膚は極めて伸展性が高く、皮下組織との結合が緩やかです。特に脇の下(腋窩)、内股(鼠径部)、脇腹には「ひだ(ルーズスキン)」が存在し、毛玉をすくい上げようとバリカンを入れた瞬間、たるんだ皮膚ごと刃に巻き込んでしまいます。皮膚だけでなく、下層の筋肉や血管まで一瞬にして切り裂き、深さ数センチに及ぶ大裂傷を負わせる事故が頻発しています。
また、猫の毛は非常に細く密集しているため、市販の家庭用バリカンでは刃が噛み込みやすく、摩擦熱が瞬時に上昇します。飼い主が気づかないうちに刃先が60℃近くに達し、皮膚の薄い猫に重度の低温火傷を負わせてしまうケースも後を絶ちません。プロのトリマーは皮膚を多角的にテンションをかけて平坦化し、刃の温度を秒単位で管理しながらミリ単位の技術で進めています。動画で見るような「おとなしく刈られている様子」は、極めて稀な気質の猫と熟練のプロ技が揃った例外中の例外であることを認識しなければなりません。