手足口病の経過において、多くの親を恐怖に陥れるのが「発疹の治りかけの異変」と「数週間後の爪の異常」です。病変の消退プロセスを正しく把握しておくことで、余計なパニックを防ぐことができます。
治りかけの水疱が見せる外見変化(写真で見る経過):
発症から3〜5日が経過すると、赤みを帯びていた水疱は次第に勢いを失います。みずみずしい水疱液が吸収されて中心部が平坦になり、色は鮮紅色から赤褐色、さらには黒ずんだ茶色の色素沈着へと変化していきます。その後、発疹があった部分の角質が乾燥して白く浮き上がり、薄皮がポロポロと剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」が始まります。この薄皮が剥がれ落ちる段階は治癒のサインであり、皮膚が再生している証拠です。この時期に無理に皮を引っ張ると表皮を傷つけて二次感染を起こすため、白色ワセリンやヘパリン類似物質で保湿を施しながら自然脱落を待つのが鉄則です。
1〜2ヶ月後に爪が剥がれる?「爪甲脱落症」の真実:
「手足口病が完全に治って1ヶ月以上経ったのに、子どもの手の爪が根元から浮いてペラペラと剥がれてきた」――皮膚科の外来で頻繁に相談されるこの現象は、医学用語で爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう:オニココメーシス)と呼ばれます。
爪が剥がれる主たる原因は、特にコクサッキーウイルスA6型(CA6)の感染によって生じます。爪を作り出す根元の組織「爪母(そうぼ)」の周辺に強い炎症や水疱ができると、爪母の細胞分裂が一時的に完全に停止します。その後、感染が治まると再び新しい爪が作られ始めますが、活動を休止していた期間に作られるはずだった「爪の空白期間」が溝となり、新しい爪が下から伸びてくるに従って、古い爪を根元から押し上げてポロリと脱落させてしまうのです。痛みはなく、下からは健康で綺麗な新しい爪が生えてきているため、無理に剥がさず医療用テープなどで保護して自然脱落を見守るだけで問題ありません。