『ひつじのショーン』に登場するあの印象的な黄色い犬の名前は、公式設定で「ビッツァー(Bitzer)」と名付けられています。作品内における彼の肩書は、牧場を取り仕切る正真正銘の「牧羊犬(シープドッグ)」。常にクリップボードを小脇に抱え、腕時計で時間を気にしながら羊たちの点呼を取る姿は、まさに真面目な現場監督そのものです。
名前の由来となっている英単語の「bitzer」は、オーストラリアやニュージーランドの口語表現で「様々な血統が混ざり合った雑種犬(bits and piecesが語源)」を指す言葉です。アードマン・アニメーションズ公式設定資料や制作陣の手記を辿ると、特定の高価な純血種ではなく、農場でタフに働き人々に親しまれる「リアルな作業犬の泥臭さ」を込めて名付けられた背景が見えてきます。
ビッツァーの立ち位置を語る上で極めてユニークなのが、牧場主とショーンたち羊の間に挟まれた「中間管理職」としての役割です。牧場主の前では従順で優秀な牧羊犬として振る舞い、頭を撫でられることを至上の喜びとしています。しかし、ひとたび牧場主が背を向ければ、二足歩行でショーンたちとピザを頬張り、ハイテク機器をいじり、トラブルの隠蔽工作に協力する無二の親友へと変化します。この人間臭い二面性こそが、世界中の大人から子どもまでを虜にするビッツァー最大の魅力です。