国家転覆から世界滅亡にまで至る未曾有の災厄。その発端となった動機は、国家間の対立でも政治的思想でもなく、1970年の夏休みに駄菓子屋「ジジババ」で起きたたった1個の宇宙特捜隊バッジの万引き事件でした。
当時、ケンヂは駄菓子屋の店主(ババア)の目を盗んでバッジをポケットに入れて立ち去りました。しかしその直後、店にやってきたカツマタ君が犯人と誤認され、激しい怒号とともに濡れ衣を着せられます。気弱だったカツマタ君は無実を叫ぶことができず、その噂は瞬く間に小学校中に広まりました。
彼に科された罰は、暴力ではなく「社会的抹殺」でした。同級生たちから「あいつはバッジを盗んで恥ずかしくて死んだ」「カツマタ君は理科の実験の前日に死んだ」と噂され、教室に座っていても誰からも話しかけられず、視界にすら入れてもらえない「幽霊」としての扱いを受け続けたのです。
誰からも存在を認識されない絶望の中で、彼は顔を隠すためにナショナルキッドのお面を被り、やがてフクベエの悪巧みに同調していきました。ケンヂたちが秘密基地のノートに書いた他愛のない空想——「巨大ロボットの襲来」「細菌兵器による東京壊滅」「地球の終わり」——は、カツマタ君にとって「自分を無視した世界への正当な復讐シナリオ」へと反転したのです。
完結編『21世紀少年』のクライマックスにおいて、ケンヂはバーチャル・アトラクション(VA)の世界にダイブし、屋上に佇む中学生のカツマタ君と対峙します。ケンヂは世界の救世主としてではなく、一人の加害者として頭を下げました。
「悪かった……あれはオレが盗んだんだ。お前がやったんじゃない」
長年隠し続けてきた罪の告白と、「ともだちになろうぜ」という一言。この極めて個人的な謝罪こそが、暴走した怨念の輪廻を止め、50年に及ぶ壮大な物語に真の終止符を打つ決定打となりました。