「帰する」を使いこなす上で最も重要なのが、決まった慣用句のセットパターンです。特に損失や無駄を表す表現は似通って見えますが、使われる現場やニュアンスには明確な境界線があります。
1. 「水泡に帰する(すいほうにきする)」
積み重ねてきた努力や計画が、途中の障害やトラブルによって「水の泡のように跡形もなく消えて無駄になる」ことを指します。
帰する例文:「半年間準備を進めてきた大型提携プロジェクトだったが、土壇場での先方の方針転換により、すべての努力が水泡に帰した。」
2. 「烏有に帰する(うゆうにきする)」
「烏有(うゆう)」とは「何もないこと」を意味し、主に火災や天災によって建物や財産が完全に焼失・消失する状況に限定して用いられる格調高い表現です。
帰する例文:「地域の象徴であった歴史的建造物は、昨夜の火災によって一夜にして烏有に帰した。」
3. 「無に帰する(むにきする)」
存在していたものや価値がゼロになり、完全に失われることを表します。物理的な消失だけでなく、精神的な信頼関係や合意事項の瓦解にも幅広く使われます。
帰する例文:「一度の不祥事によって、創業以来50年かけて築き上げた社会的信用が無に帰した。」
4. 「徒労に帰する(とろうにきする)」
かけた労力や時間に対して、何ら成果や見返りが得られず無駄骨に終わることを意味します。
帰する例文:「入念な市場調査を行ったものの、ターゲット層の急変により、これまでの分析作業は徒労に帰する結果となった。」
5. 「一言に帰する(いちげんにきする)」と「帰するところ(きするところ)」
「一言に帰する」は「多くの言葉を尽くしても、結局は一言に要約できる」ことを意味し、「帰するところ」は「最終的な結論や落ち着く先」を指します。要約や総括の局面で論理を展開する際に重宝する表現です。