半世紀前のあの日、市ヶ谷のバルコニーで撒かれた檄文は、高度経済成長に浮かれる日本への痛烈な警告だった。経済的繁栄と引き換えに魂を喪失した国家の未来を、三島は命を賭して予言しようとしたのか。
生き残った青年たちが背負った重荷は、事件を起こした罪そのものだけではない。三島という巨大な偶像が神話化されていくプロセスを、最も近い場所から目撃し続けなければならなかったことにある。彼が選んだ半世紀に及ぶ沈黙は、雄弁な言論活動よりもはるかに雄弁に、あの日交わされた約束の重さを物語っている。
情報が氾濫し、あらゆる価値観が軽薄に消費される現代だからこそ、すべてを捨てて刀を抜いた者たちの実相を見つめ直す必要がある。彼らが市ヶ谷の空に見出したものは何だったのか。その答えを探す旅は、今を生きる私たち自身の足元を照らし出す作業に他ならない。 (出典: 古賀 浩靖(Yahoo!ニュース))
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