豚まんにまつわる混乱を深めているもうひとつの大きな要因が、「蓬莱」という名前を冠する別会社が存在する点です。スーパーの中華街フェアや冷凍食品コーナーで「蓬莱の豚まん」を見かけ、「551のロゴが入っていないけれど本物なのか?」と疑問を抱いた経験を持つ人は少なくありません。
この謎を解く鍵は、昭和の戦後復興期にまで遡る蓬莱の歴史にあります。1945年(昭和20年)、創業者である台湾出身の3名(羅邦強氏、蔡水池氏、蔡信忠氏)が大阪・難波の地で立ち上げた「蓬莱食堂」がすべての原点です。創業当初から看板メニューの豚まんは爆発的な人気を博しましたが、事業の拡大に伴い、経営方針の違いから1964年(昭和39年)に会社を3社へ分割(のれん分け)することになりました。
- 株式会社蓬莱(屋号:551蓬莱):羅邦強氏が引き継いだ直営展開の会社。駅ナカや百貨店での「手包み・できたて実演販売」に特化し、味のクオリティを最優先する戦略を維持。
- 株式会社蓬莱本館:蔡水池氏が引き継いだ会社。難波の中国料理レストラン経営のほか、スーパーや生協、一般流通向けの冷蔵・冷凍食品の卸売に注力。
- 株式会社蓬莱別館:蔡信忠氏が引き継いだ会社。中国料理レストランの運営を中心に展開(※現在は豚まんの量産卸は行っていない)。
消費者が「551蓬莱 豚まん」と「蓬莱本館 豚まん」を別物だと気づかずに購入し、「以前食べた味と皮の厚みや具材の食感が違う」と感じることが、「数字が付く店と付かない店がある」「511という別の店があるのではないか」といった誤解の連鎖を生む構造的な引き金になっています。