アンパンマンを生み出す以前、彼が作詞を手掛けた名曲『手のひらを太陽に』もまた、彼の死生観を語る上で欠かせない文化財産だ。いずみたく氏の軽快なメロディに乗せて、「ミミズだって オケラだって カエルだって」と歌われるこの楽曲は、単なる明るい童謡にとどまらない、深い命の讃歌である。
戦争の暗闇の中で「生きていくことの重み」を痛感したやなせ氏だからこそ書けた言葉の数々。太陽にかざした手に流れる血の温かさを実感する描写には、生きとし生けるものすべてに対する平等な愛おしさと、命の尊さが凝縮されている。死と隣り合わせの青春を過ごしたからこそ、彼は日常の何気ない「生きている」瞬間を肯定し続けた。