モネの晩年は、眼病との壮絶な闘いでもあった。70代半ばから重度の白内障に悩まされたモネは、世界の色彩が赤や黄色に歪んで見える症状に苦しみ、一度は筆を折る寸前まで追い込まれた。
しかし、彼は諦めなかった。眼鏡や特殊なレンズを使い分けながら、あるいは絵の具のチューブのラベルの文字を頼りに絵筆を動かし続けた。視力を失いかけたことで、輪郭線は消え失せ、色彩は力強く荒々しいタッチへと変貌を遂げた。かつて批評家たちから「混迷」と評されたこの最晩年のスタイルこそが、後にマーク・ロスコやジャクソン・ポロックらアメリカの抽象表現主義の画家に多大な影響を与えることとなる。モネの障害への抗いは、結果として絵画の歴史を数十未来へ押し進める革新となったのだ。