多くの読者が固唾をのんで見守った原作漫画の結末において、物語は単なる「ハッピーエンド」という安易な言葉では括れない、成熟した魂の救済を描き出しました。別冊少女コミック(現・ベツコミ)連載当時、読者の胸を締め付けた高校時代の別れから、物語は東京を舞台とした大人編へと舵を切り、最終16巻で感動のクライマックスを迎えます。
東京で過酷な現実と向き合いながらも矢野を待ち続けていた高橋七美は、就職先で働きながら大人へと成長していました。しかしその傍らには、矢野の親友であり七美を一途に愛し続けた竹内匡史の存在がありました。竹内は七美にプロポーズし、七美も一度はその温もりに身を委ねようとします。だが、七美の心の深淵に刻まれた「矢野元晴」という楔は、どれほど歳月が流れても消えることはありませんでした。
運命の糸が再び手繰り寄せられたのは、同級生の千見寺亜希子らの介入、そして竹内自身の「ある決断」がきっかけでした。竹内は七美の心が決して自分だけを向いていない痛みに向き合い、涙を呑んで婚約を解消。七美の背中を押して矢野の元へと送り出します。自らの幸せよりも2人の真の救済を優先した竹内の身引きは、連載完結時もファンの間で大きな慟哭を呼びました。
再会を果たした矢野と七美。矢野は長年縛られ続けていた山本有里との歪な関係を断ち切り、自分自身の足で生きる覚悟を決めていました。屋上で向かい合う2人の間には、もはや無邪気だった高校時代の面影だけではなく、過酷な現実を生き抜いて刻まれた無数の傷跡が存在していました。しかし矢野は、自らの手で選んだ指輪を七美の指へと通し、永遠の愛を誓います。「過去に負けない今を作る」――失われた歳月を受け入れ、痛みを抱えながらも共に歩むことを選んだ2人の旅立ちは、少女漫画の枠を超えた人間ドラマの到達点として今も語り継がれています。