無敵を誇った双黒がなぜ解散に至ったのか。その決定的な引き金となったのは、中原中也との関係悪化ではなく、太宰治の唯一無二の理解者であった織田作之助の死でした。
「黒の時代」において、ポートマフィアの首領・森鴎外は、異能特務課から「異能開業許可証」を取得するため、敵対組織ミミックを利用した冷徹な策謀を実行しました。その結果、織田作之助は子供たちを奪われ、ミミックの首領ジイドと相討ちになって命を落とします。死に瀕した織田作から「人を救う側になれ」と遺言を託された太宰は、その足でマフィアと決別し、地下へと姿を消しました。
この離反劇の際、太宰は中也に事前の相談や別れの言葉を一切残していません。それどころか、組織を抜ける置き土産として中也の愛車に爆弾を仕掛けて爆破するという、太宰らしい痛烈な嫌がらせを敢行しています。一方の中也も、太宰の失踪を知った当夜に「最高級のペトリュス(ワイン)」を開けて祝杯を挙げたと語られていますが、互いに相手の動向を誰よりも正確に予見していたからこその奇妙な幕引きでした。組織の論理と個人の生き様が乖離した瞬間、伝説のコンビは必然的にその歴史にピリオドを打つことになったのです。