「嬲られている」の意味と漢字の深層|ネット創作を揺るがす語源の真相

「嬲られている」の意味と漢字の深層|ネット創作を揺るがす語源の真相

「嬲られている」の意味と漢字の深層|ネット創作を揺るがす語源の真相の見逃せないポイントを一挙に解説しました。

多くの人がこの言葉に立ち止まる最大の理由は、やはりその異様な字形にあります。「嬲」という漢字の成り立ちは、両脇の「男」の間に「女」を配置した会意文字です。古代中国の文字学資料や説文解字の系譜を紐解くと、複数の男性がひとりの女性を取り囲んで戯れる、あるいはからかい弄ぶ情景から生まれたと解釈されています。

対をなす漢字として、ふたりの「女」がひとりの「男」を挟む「嫐(うわなり/なぶる・ねたむ)」が存在することも有名です。中世日本の婚姻形態において後妻を「嫐(うわなり)」と呼び、先妻が後妻の家を襲撃する「うわなり打ち」という習俗が存在したように、男女間の愛憎や嫉妬、力関係の乱れを象徴する文字として用いられてきました。

一方で、和語としての「嬲る」の語源は、古代日本語の「なぶ(手で触れる、いじる、弄ぶ)」に遡ります。平安時代以降、「神仏を軽々しくなぶる(触れる)なかれ」といったタブー表現から、次第に対人関係における「弱者をいたぶる」「玩弄する」意味へと意味領域がシフトしていきました。漢字の視覚的暴力性と、和語が持つ粘着質な接触ニュアンスが融合した結果、現代に伝わる独特の陰惨さと艶めかしさが醸成されたのです。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。