歌舞伎の観客や一般読者が最も混同しやすいのが、成駒屋と中村屋の違いと関係です。どちらも同じ「中村」を名乗り、舞台上でも共演が多いため、「兄弟の一門なのか」「同じ家の分家なのか」という疑問がネット上でも頻出しています。しかし、その出自と劇界における役割は明確に異なります。
歴史的な発祥を比較すると、その差異は明白です。中村屋は、江戸歌舞伎の始祖である江戸三座の一つ「中村座」の座元(劇場経営者・興行主)の系譜を引き、十七代目および十八代目中村勘三郎、そして現在の六代目中村勘九郎、二代目中村七之助へと受け継がれる江戸っ子の象徴的な名門です。一方の成駒屋は、上方(大坂)の初代中村歌右衛門が文化・文政期に江戸へ下り、圧倒的な芸の力で江戸歌舞伎の頂点に君臨した役者主導の血統です。
しかし、歴史的背景は異なれど、血縁的には極めて密接に絡み合っています。十七代目中村勘三郎の姉である波野久邇子(くにこ)は、成駒屋の象徴であった六代目中村歌右衛門の妻でした。さらに、芝翫の父である七代目芝翫と十七代目勘三郎は親族として非常に親密な交流を続けていました。現在でも勘九郎・七之助兄弟と芝翫の息子3人は、同じ「中村」の誇りを胸に切磋琢磨する盟友であり、劇場の現場でも強固な結束を見せています。