「無菌室に入室する」と聞くと、多くの人が病状の絶望的な悪化を連想しがちですが、血液内科などの臨床現場における位置づけは真逆です。無菌室は、患者の命を諦める場所ではなく、病気を完全に叩き潰すための「攻めの治療」を安全に行うための防御基地にほかなりません。
血液のがんである無菌室 白血病 入る理由の根幹にあるのは、体内の白血球(特に細菌を攻撃する好中球)の極端な減少です。白血病細胞を死滅させるために大量の抗がん剤を投与する強力化学療法や、骨髄などの造血機能を一度リセットしてドナーの細胞を注入する造血幹細胞移植 無菌室での治療では、一時的に体内の免疫細胞がほぼ「ゼロ」に近い状態にまで落ち込みます。
通常であれば健康な人の皮膚や呼吸器には無害な空気中のわずかなカビ(アスペルギルスなど)や常在菌であっても、免疫が失われた体内に入り込めば、数時間から数日で命に関わる重篤な敗血症や肺炎を引き起こします。つまり、患者の生命力を奪う感染症を極限まで遮断し、新しい血液細胞が生着・回復するまでの「最も無防備な期間」を乗り切るために無菌室が必要とされるのです。