問題の根幹は個々の保育士の資質だけに帰結するものではない。幼児教育・保育業界全体を覆う深刻な人手不足、低賃金による高い離職率、そして過密な配置基準が、保育士から観察力と精神的余裕を奪っている現実を見逃すことはできない。
1人の保育士が多数の園児を同時に見守らなければならない極限状態において、子どもたちの微細な感情の変化や人間関係の摩擦を未然に察知することは極めて困難だ。現場の疲弊が放置された結果、問題行動の兆候が見過ごされ、最終的な集団いじめへと発展してしまう負の連鎖が存在する。
現在、国が進める「保育所保育指針改定プロジェクト」においても、集団保育における個の権利擁護とリスクマネジメントのあり方が主要な争点として急浮上している。配置基準の抜本的な改善や専門職としての待遇向上が伴わなければ、いかに美辞麗句のガイドラインを策定したところで、現場の形骸化を止めることはできない。