日常の挨拶をモチーフにした物語の原点を辿ると、日本映画界の巨匠・小津安二郎が手がけた映画『お早よう』(1959年)に行き着く。子供たちの「テレビを買ってほしい」という無邪気なストライキと、大人が交わす「お早よう」という空疎でいて愛おしい挨拶の連鎖を描いた同作は、言葉の表裏にある人間関係の綾を見事に切り取っていた。
現代のヒットメイカーたちは、まさにこの作品が持っていた独自のDNAを令和の時代にアップデートしようとしている。無意味に見える挨拶が、実は社会の潤滑油としていかに決定的な役割を果たしているか。半世紀以上の時を超え、当時の批評性が現代の文脈で再び力強く鳴り響いている。