土方十四郎を語る上で欠かせない人間ドラマが、沖田総悟の姉である沖田ミツバとの関係です。ファンの間でも「涙なしには見られない」と語り継がれるミツバ篇では、普段感情を表に出さない土方の痛烈な本音が描かれました。
武州時代、ミツバは土方に想いを寄せており、土方自身も彼女に特別な感情を抱いていました。しかし、いつ命を落とすかわからない修羅の道へ進む自分では、彼女を幸せにできないと悟った土方は、その好意をあえて拒絶します。後に病に倒れたミツバが命を引き取る間際、土方は激闘の屋上でただ一人、彼女の好物だった激辛せんべいを頬張り、人知れず涙を流しました。「惚れた女にゃ、幸せになってほしいだけだ」という不器用すぎる愛の形は、多くの読者の胸を締め付けました。
一方、主人公・坂田銀時との関係性は、まさに「合わせ鏡」のようなライバル関係です。顔を合わせれば罵倒し合い、好物の味覚(宇治銀時丼と土方スペシャル)で衝突する二人ですが、根底に流れる侍としての美学や、大切な仲間を守るために自らを犠牲にする覚悟は酷似しています。言葉を交わさずとも互いの意図を察し、背中を預け合える戦友としての絆は、物語の要所で強烈なカタルシスを生み出しました。