奈良・ならまちの「そば処 玄」が「日本一予約が取りにくい蕎麦屋のひとつ」と呼ばれるのには、明確な構造的理由があります。単なるブームやメディア露出による一時的な過熱ではなく、店主が貫く品質への徹底したこだわりと物理的な受入限界が直結しているためです。
第一の理由は、1日に打つ蕎麦の絶対的な上限です。店主・三間氏は蕎麦の風味を極限まで引き出すため、玄蕎麦の選定から自家製粉、手打ちに至る全工程を一切の妥協なく一人で管理しています。蕎麦は打ち立てから急速に風味が変化する極めて繊細な食材であるため、大量生産や作り置きは一切行いません。
第二に、店舗のキャパシティの小ささが挙げられます。歴史ある町家を改装した店内は、カウンター席と座敷・テーブル席を合わせても10席〜14席程度しかありません。昼夜ともに回転率を追求せず、客一人ひとりが蕎麦前やコースを心ゆくまで楽しめるよう十分な滞在時間を確保しているため、1日に案内できる組数は極めて少数に限定されます。
現在も予約方法は電話受付のみとなっており、WEB予約システム等は導入されていません。受付開始日時になると全国から一斉にコールが集中するため、回線がパンクし「何度かけても話し中で繋がらない」という現象が日常茶飯事となっています。これが「予約が取れない店」という評判を生む直接的な要因です。