ミスチルの音像変化を語る上で欠かせないのが、近年の活動を象徴する作品となったアルバム「miss you」だ。それまでのスケール感あふれるサウンド展開から一転、あえてストリングスやホーンセクションを削ぎ落とし、メンバー個々の生々しい演奏と手触り感を前面に押し出したアコースティックなアプローチ。ここには、従来のポップ・ロックという枠組みを超え、より個人の内面に潜行するオルタナティヴ・ロック的なスピリットが脈打っている。
バンドのソングライターである桜井和寿が自身のプライベートスタジオで紡ぎ出した楽曲群は、煌びやかなJ-POPの文脈というよりも、独白に近い。過度な装飾を排し、あえて傷つきやすさや孤立感を露わにするスタイルは、長年のファンを大いに驚かせた。しかし同時に、それこそが成熟したバンドが見せた「嘘のない誠実さ」として強い共鳴を呼んでいる。