視覚的なインパクトにおいても、工藤のスタイルは群を抜いていた。純白のベスパ150スーパーに跨がり、黒のジャケットに原色のシャツ、足元は白いエナメル靴。そして頭上には深く被ったキャメルのソフト帽。
小道具の一つひとつにも、優作自身の強烈な美学が宿っていた。炎が異常なほど高く立ち上るライター、目を覆うアイマスク、愛飲するショートピース。それらは単なる装飾品ではなく、工藤俊作という男の呼吸や生き様を雄弁に物語るアイコンだった。
このビジュアル・アイデンティティは、後のクリエイターたちに計り知れない影響を与えている。アニメや漫画に登場する数々のアイコニックなキャラクターの原点を探れば、必ずと言っていいほど、あのソフト帽を斜めに被った探偵のシルエットへと行き着くのだ。