SNSやネットの料理掲示板では、時折「白だしでカツ丼を作ったら味がぼやけた」「なんだか薄味で物足りなかった」という不満の声が散見されます。しかし、綿密な検証を行うと、これは白だしという調味料の欠陥ではなく、「調理時の計量と物理現象の誤認」に起因していることが判明しています。
第1の盲点は、「色の薄さ=塩分の低さ」という思い込みです。前述の通り、白だしは大さじ1杯で約1.3〜1.5gの塩分を含んでおり、これは濃口醤油ベースのめんつゆと大差ありません。目分量で作る人が「色が薄いから」と警戒して規定量より水を多く注いでしまったり、逆に「味を濃くしよう」と白だしを過剰に投入して塩辛さだけを突出させてしまったりすることが、味の破綻を招く主因です。
第2の盲点は、カツの衣が煮汁を吸い上げる吸水率の計算漏れです。揚げたてのカツや大判のカツは、鍋に入れた瞬間に予想以上のペースで煮汁を吸い取ります。煮汁の絶対量が不足すると、卵を流し込んだ際に鍋底が焦げ付き、卵全体にだしの旨味が回らなくなります。1人前につき最低でも100mlの水分量を確保することが、ジューシーな仕上がりの防波堤となります。
第3の盲点は、薬味・副材料との相性設計です。めんつゆ仕立てのカツ丼では紅生姜やたくあんが定番ですが、白だし仕立ての繊細な風味に酸味の強い紅生姜を合わせると、だしの風味が消し去られてしまいます。白だしカツ丼の真価を引き出す相棒は、「三つ葉」「青しそ(大葉)の千切り」「すだちや柚子の絞り汁」「上質な粉山椒」です。和の芳香をまとう薬味を合わせることで、一口ごとの満足度が劇的に跳ね上がります。