調理時に多くの人が直面するのが、「貝柱の横についている黒緑色の丸い塊(ウロ)を取るべきか否か」という疑問です。ネット上では「ウロには猛毒があるから食べてはいけない」という警告も見られますが、稚貝における実態はどうなのでしょうか。
この黒い器官の正式名称は「中腸腺(ちゅうちょうせん)」といい、人間でいう肝臓や膵臓にあたる消化器官です。成貝(大人のホタテ)の場合、有毒プランクトンを長期間捕食することで麻痺性貝毒や下痢性貝毒、重金属(カドミウム)がこのウロに濃縮・蓄積されやすいため、食品衛生上の観点からウロを除去して販売することが法令等で義務付けられています。これがホタテ稚貝の食べられない部分の真相としてネット上で過剰に恐れられている背景です。
しかし、出荷されるホタテ稚貝の貝毒の危険性については、公的検査機関によって厳格な安全網が敷かれています。北海道や青森県の水産試験場および関係省庁では、海域ごとに週1回以上の定期的な貝毒モニタリング検査を実施しています。毒化の兆候(規制値:麻痺性貝毒4MU/g、下痢性貝毒0.16mg OA当量/kg)が確認された海域では即座に出荷規制がかけられ、市場に毒化した貝が出回ることはありません。さらに稚貝は成貝に比べて海中での捕食期間が短いため、ウロ自体の毒素蓄積量も極めて微量です。
そのため、正規の流通ルートで購入したホタテ稚貝であれば、ウロを取り除かずに丸ごと加熱して食べて健康上の問題はありません。ただし、ウロには特有のほろ苦さや内臓臭があり、まれに消化途中のプランクトン微粒子がジャリッとした舌触りとして感じられる場合があります。苦味が苦手な子ども向けに調理する場合や、澄んだ出汁を楽しみたいときは、以下のホタテ稚貝の下処理(ウロ取り)を行うと仕上がりが格段に上品になります。
【ウロを外す場合の手順】
生の状態で隙間にナイフを入れて殻を開くか、サッと30秒ほど熱湯にくぐらせて口を開かせます。貝柱の脇にある黒緑色の袋状の部分を指先やスプーンで軽くつまんで引っ張るだけで、ペロッと簡単に剥がれ落ちます。