インターネット上の言説で頻繁に見られるのが、「サードウェーブコーヒーはアメリカ発の全く新しい黒船文化であり、日本はそれを受け入れた側だ」という誤解です。
しかし、歴史的事実を丹念に追うと、事態はむしろ逆であることが分かります。サードウェーブの代表格である「ブルーボトルコーヒー」の創業者ジェームス・フリーマン氏は、日本の「純喫茶」や銀座「カフェ・ド・ランブル」などの名店に通い詰め、日本のマスターたちが実践していたネルドリップによる一滴ずつの抽出、自家焙煎技術、豆への偏執的なまでの探求心に深い衝撃を受けたと公言しています。
つまり、サードウェーブとは「日本古来の職人型喫茶店文化」をアメリカ西海岸のクリエイターが再解釈し、シングルオリジン(単一農園)やダイレクトトレードという現代の透明性をまとわせて世界へ逆輸出したカルチャーなのです。日本のコーヒー史を理解していれば、サードウェーブは外来文化の単なる模倣ではなく、私たちが育んできた美意識の里帰りであったことがよく分かります。