高校軟式野球を観戦したプロ野球スカウトや硬式経験者の多くが、一様に「これは硬式とは全く別の、極めて過酷な競技だ」と舌を巻きます。その根本的な理由は、使用されるボールの物理特性にあります。
軟式球(現在はM号球などの公認規格)は中空のゴム構造であり、インパクトの瞬間に大きく変形します。このため、どれほど屈強な打者がフルスイングしても、インパクト時のエネルギーロスが大きく、硬式球のような長打・本塁打は構造的に滅多に出ません。外野の頭を越す打球は極めて稀で、長打による一挙大量得点はほぼ期待できない競技性を持っています。
その結果、攻撃側の基本戦術は「徹底してボールの上を叩き、内野の頭を越す高いバウンドを打つ(いわゆる『叩き』)」か、「セーフティバントと盗塁を絡めて1本の単打もなしに1点をもぎ取る」という知略戦に収斂します。一方で守備側にとっては、予測不能なイレギュラーバウンドを処理し、猛ダッシュで突っ込んでくる走者を間髪入れずに刺さなければなりません。「1点の重み」が硬式の数倍に跳ね上がるため、グラウンド上の全選手が1球ごとに胃をすり減らすような精神的重圧に晒され続けるのです。