深夜2時の静寂を切り裂く奇妙な鳴き声に恐怖を覚えた経験はないでしょうか。かつて怪異や妖怪伝承として語り継がれた鳴き声の多くは、夜行性鳥類の活動に起因しています。ネットの知恵袋等で「夜中に人間の叫び声のような音が聞こえる」と相談される事例の8割以上が、以下の鳥類に集約されます。
夜空から響く「クワッ」という濁声|ゴイサギ(夜烏)の生態
街灯の明かりしかない深夜、遥か上空から突然「クワッ!」「ギャア!」と濁ったカエルのような、あるいは怪獣のような単音が降ってくることがあります。この声の正体はゴイサギです。日中は水辺の樹上で首をすくめてじっと眠り、完全に日が落ちてから餌場を求めて川や水田、都市の河川へと移動する完全な夜行性サギです。
飛翔しながら仲間同士で衝突を避けるためのコンタクトコール(交信音)として発声しており、姿が闇に紛れて完全に見えないため、都市部の住民にとっては「夜空に潜む謎の飛行物体」として強い違和感と恐怖感を与え続けています。
平安の怪異「鵺」の正体|トラツグミの金属的口笛
山あいの温泉街や樹木の多い住宅街の深夜、金属を擦り合わせたような「ヒー…」「ヒョー…」という細く物悲しい口笛に似た単音が数秒おきに反響することがあります。平家物語で「頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎」の妖怪として描かれた「鵺(ヌエ)」の鳴き声とされたのが、このトラツグミの発声です。
トラツグミは薄暗い森林の地上を歩き回る鳥ですが、繁殖期である初夏から夏にかけて、真夜中から明け方にかけてオスが梢の天辺で単調かつ哀切な声で鳴き続けます。その周波数は人間の聴覚が不安を覚えやすい帯域に合致しており、科学が未発達だった時代に怨霊の祟りと恐れられたのも心理学的に頷ける現象です。
都市鳥が夜中に狂い鳴く「人工光害」という現代病
深夜のコンビニエンスストアの看板や、24時間点灯する高輝度LED街灯の周辺で、昼行性であるはずのハクセキレイやヒヨドリが真夜中に激しくさえずる現象が報告されています。環境省の都市生態系モニタリング調査でも指摘されている通り、過剰な都市の人工照明(光害)によって体内時計が狂い、鳥たちが「すでに夜が明けた」と錯覚してパニック的に鳴き交わす事例が確認されています。深夜の鳥鳴きは、単なる野生の営みだけでなく、都市環境の歪みを映し出す鏡でもあります。