姫路のモーニングを体験した県外者が一様に驚愕するのは、その圧倒的なボリュームと店内の活気です。トースト1枚とゆで卵という一般的なモーニングの概念を覆し、パスタや揚げ物、大盛りサラダがワンプレートに同居する様は、朝食というよりもはや本格的なランチプレートの様相を呈しています。
この異色ともいえる過密なサービス精神が根付いた背景には、姫路喫茶店モーニング文化の歴史と経緯が深く関わっています。姫路市は高度経済成長期以降、新日本製鐵(現・日本製鉄)広畑製鉄所をはじめとする重化学工業の集積地として発展を遂げました。昼夜を問わず24時間体制で稼働する工場街では、三交代勤務の労働者たちが早朝に夜勤明けを迎えます。勤務を終えた男たちが一堂に会し、空腹を満たしながら同僚と労をねぎらう場所として、早朝から営業する喫茶店が不可欠な社会インフラとなっていったのです。
さらに見逃せないのが、播州地域特有の「家の外に応接間を持つ」という生活習慣です。かつて姫路周辺の住宅事情や地域コミュニティでは、自宅のリビングに人を招く代わりに、近所の馴染みの喫茶店に集まって商談や世間話を行う文化が定着しました。店主たちは競い合うように居心地の良さとサービスの充実を追求し、コーヒー1杯に付けるオマケを増やしていきました。これが現代に続く、姫路モーニングボリューム満点の決定的な理由となっています。単なる外食ではなく、地域住民の生活リズムと社交場が一体化した結果、全国的にも類を見ない過剰なほどのサービス精神が標準装備となったのです。