フェリス女学院中学校・高等学校において、「指定制服」や学校が指定する「標準服」は一切存在しません。1870年(明治3年)創立という日本屈指の歴史を誇るプロテスタント系キリスト教女子校でありながら、完全な私服通学を採用している点は、全国の女子校の中でも極めてユニークな特徴といえます。
歴史を紐解くと、かつては伝統的なセーラー服が制定されていた時代もありました。転機となったのは、全国的な学生運動の余波が残る1970年代初頭です。生徒たちの主体的な議論と自主性を重んじる学園の決断により、1972年に制服の着用義務が撤廃されました。以来半世紀以上にわたり、自由な私服通学の伝統が受け継がれています。
制服がない根本的な理由は、同校の教育理念である「For Others(他者のために)」と、キリスト教信仰に基づく自主自律の精神にあります。外見を規則で均一化するのではなく、「時と場所、立場に応じた服装を自らの判断で選ぶ」こと自体を重要な人間教育と位置づけているためです。管理教育によって従順さを養うのではなく、一人ひとりの個性と責任感を育む姿勢が、私服通学という形に表れています。