1980年代前半、日本映画界において夏目雅子の存在感は頂点を極める。『時代屋の女房』で見せた軽やかでコケティッシュな色気、そして篠田正浩監督の『瀬戸内少年野球団』で見せた清廉で包容力あふれる女性教師役。彼女の表現力は円熟味を増し、名実ともに邦画界の至宝となっていた。
同じ頃、伊集院もまた人生の大きな転換期を迎えていた。広告の世界から身を引き、表現の場を出版業界へと移し始めたのだ。互いに異なるジャンルで表現の極限を求め合う二人は、恋人であると同時に、最も深く理解し合える表現者の同志でもあった。1984年、長い交際期間を経て二人はついに正式な婚姻関係を結ぶ。しかし、手に入れた穏やかな幸福はあまりにも短かった。