王子稲荷神社の境内に一歩足を踏み入れると、JR王子駅前の喧騒が嘘のように遠のきます。参拝者の間で「王子稲荷神社 怖い理由」として語られる最大の現場が、拝殿の右脇から裏手へと続く石段を登った先にある「奥の院」と、そのさらに奥に鎮座する「狐穴」です。
武蔵野台地の突端に位置するこの傾斜地は、昼間でも鬱蒼とした木々に覆われ、木漏れ日がわずかに差し込む程度の薄暗さに包まれています。かつて野生の狐が実際に棲み着き、神の使者として崇められたとされる横穴の前には、朱色の鳥居が無数に立ち並び、独特の冷気が足元から立ち上ります。現地を訪れた参拝者からは「急に鳥肌が立った」「誰かにじっと見下ろされているような気配を感じた」といった証言が後を絶ちません。
この「王子稲荷神社 不思議な体験」の正体について、単なる心霊現象と片付けるのは早計です。民俗学的な観点から見れば、稲荷信仰は古来より「現世利益の神」であると同時に、「粗末に扱えば祟りをもたらす神」としての両面性を強く帯びてきました。神仏分離以前の密教や修験道と結びついた狐信仰の厳格さが、都市化された東京の片隅にそのまま手付かずで保存されているため、訪れた人々は無意識のうちに本能的な畏敬の念――すなわち「怖さ」として感知するのです。