破裂と並んで多いトラブルが「アイラップが電子レンジの中でドロドロに溶けた」という失敗だ。アイラップの原料は高密度ポリエチレン(HDPE)であり、耐熱温度は120度、耐冷温度は-30度と設定されている。一般的な家庭用ポリ袋(耐熱温度70〜80度程度)に比べれば格段に熱に強いものの、電子レンジ加熱においては極めて簡単にその限界を超えてしまう落とし穴が存在する。それが「食品中の油分」だ。
純粋な水分の沸点は100度で頭打ちになるため、野菜の下茹でや水分の多い食材の温めであれば、耐熱温度120度を超えることは基本的にない。しかし、油(油脂類)はマイクロ波を受けると150度から200度以上まで瞬時に跳ね上がる特性を持つ。油分を多く含む肉料理、カレー、シチュー、揚げ物の温め直し、あるいはタレに油分が含まれる総菜などをアイラップに入れて加熱すると、食材と袋が接している部分が数秒で120度を超過し、ポリエチレン組織が溶融・破断する。
溶けた袋の隙間から高温の油脂が漏れ出せば、焦げ付きや煙の発生、最悪の場合は庫内発火に直結する。食品衛生法上の規格基準を満たしているため微小な誤飲が直ちに急性毒性を示すわけではないが、破れたプラスチック片が混入した料理は当然ながら口にできない。「油分を含む料理はアイラップごとレンジ加熱しない」という判断基準を徹底することが不可欠だ。