チェンソーの悪魔が他のあらゆる悪魔と一線を画し、支配の悪魔(マキマ)を狂信的な執着へと駆り立てた最大の要因が、「食べた悪魔の名前と、その概念をこの世から完全に抹消する能力」です。
通常の悪魔は、現世で殺されれば地獄に転生し、地獄で殺されれば再び現世に転生する輪廻を繰り返します。しかし、チェンソーの悪魔に捕食された悪魔は、その輪廻の輪から完全に弾き出されます。単に存在が死を迎えるだけでなく、過去・現在の歴史、人々の記憶、物理的事象を含めた「その名前が指し示す概念そのもの」が、最初から世界に存在しなかったことへと書き換えられてしまうのです。
作中でマキマが列挙した事例は、この能力の凄まじさを如実に物語っています。
- 第二次世界大戦・ナチス:大戦の惨禍やホロコーストという歴史的事実そのものが世界から消失。
- エイズ・核兵器:人命を脅かす致命的な病魔や究極の大量破壊兵器の概念が消滅。
- 人間の持つ第六感:五感のほかに人類がかつて備えていた知覚機能の抹消。
- 生命の死以外の4つの結末:かつて存在したとされる「死」以外の生体の終着点。
これらの恐るべき概念群は、すべてポチタの胃袋の中に収められたことで、作中世界の現実から綺麗さっぱり削ぎ落とされました。マキマが目論んだ「チェンソーマンを使って死や飢餓、戦争といった人類の苦痛となる概念を消し去り、完全な世界を創る」という野望は、まさにこの特異な摂理干渉能力に基づいていたのです。