スキンケアの手順において、最も多くのユーザーが迷走しているのが顔の保湿クリームと乳液の順番です。ネット上では「両方を重ね塗りするのが王道」という言説が散見されますが、処方設計の観点から見れば、これは必ずしも正解とは言えません。
乳液とクリームは、配合されている「水分と油分の比率」が異なる同系統の乳化製剤です。一般的な水分・油分比率は、乳液が「水分約70〜80%:油分約20〜30%」であるのに対し、保湿クリームは「水分約40〜60%:油分約40〜60%」で構成されています。したがって、基本の塗布順序はテクスチャーの軽い順、すなわち「水分が多い乳液が先、油分が多いクリームが後」がセオリーです。しかし、2026年現在の高機能スキンケアにおいては、「肌質に合わせてどちらか一方に絞る」という引き算の選択が定着しつつあります。特に皮脂分泌が一定量ある混合肌の場合、両方を重ねる行為は過剰油分による酸化や毛穴詰まりの直接的な引き金になり得ます。
もう一つの深刻な誤解が、ニキビ肌向け顔の保湿クリームの真相です。「ニキビがあるときは油分を一切排除すべき」という言説を信じ込み、化粧水だけでスキンケアを終えているケースが目立ちます。しかし、大人ニキビの約6割は、肌内部の水分不足によるバリア機能低下が原因となる「インナードライ」から発生しています。水分が枯渇した肌は、防衛反応として皮脂を過剰に分泌し、それが毛穴に詰まってアクネ菌の温床となるのです。
ニキビ肌に必要なのは「無保湿」ではなく、「アクネ菌の栄養源になりにくい油分を選び、適切な油水分バランスを保つこと」です。具体的には、油脂類(オリーブ油やマカデミアナッツ油など)を避け、シリコーンオイルやエステル油、スクワランなどをベースにしたノンコメドジェニックテスト済み製品を選ぶのが皮膚科学的にも合理的な判断です。