なぜすかいらーくは、人口約16万人、十勝圏全体で約33万人を抱える有力商圏の帯広にしゃぶ葉を出店しないのでしょうか。大手外食チェーンの店舗開発担当者が直面する構造的な課題を紐解くと、北海道特有のロジスティクスと損益分岐点のシビアな現実が見えてきます。
最大障壁となっているのが、生鮮野菜とチルド肉に特化したチルド物流の維持コストです。ガストのように冷凍食材や加工済みパウチが主体の業態であれば、数日に1便の配送でもオペレーションを維持できます。しかししゃぶ葉のビジネスモデルは、20種類以上の生野菜バーと大量の薄切り生肉を毎日新鮮な状態で保つことが生命線です。札幌のセントラルキッチンや物流拠点から日勝峠・狩勝峠を越えて帯広へ毎日生鮮配送ルートを維持するには、1店舗だけの出店では輸送費が高騰し採算が合いません。
外食チェーンが地方都市へ新規進出する際は、近隣地域に2〜3店舗を同時展開して配送効率を高める「ドミナント出店」が鉄則です。帯広市内に1店舗、近隣の音更町や札内、あるいは釧路とセットで出店できる見通しが立たない限り、配送単価の壁が立ちはだかります。
さらに、帯広特有の強力なローカル外食網も要因の一つです。十勝は「平和園」を筆頭とする驚異的なコストパフォーマンスを誇る地元焼肉店や、圧倒的な支持を集めるカレーショップ「インデアン」など、全国チェーンを寄せ付けない強固な地元食文化が存在します。客単価1,500円〜2,500円前後の日常食市場において、地元チェーンと真っ向勝負を挑むには相応のリスクヘッジが求められます。