時計の針を少し巻き戻すと、2021年の東京五輪銀メダル獲得、そしてトヨタ自動車アンテロープスでのWリーグ連覇を達成した直後、彼女は突然「現役引退」ではなく「1年間の休養(サバティカル)」を発表しました。絶頂期にあった主力選手の戦線離脱に、ファンや関係者の間では「怪我の悪化ではないか」「人間関係のトラブルか」といった憶測が飛び交いました。
しかし、本人が会見や後の独占インタビューで明かした真相は、極めて論理的かつ切実なものでした。「東京五輪が終わった後、心身ともにすべてを出し切り、バスケットボールに対する情熱の炎が小さくなっていることに気づいた」「心が動かないままコートに立ち続けるのは、ファンやチームメイトに対して誠実ではない」という、極度のバーンアウト(燃え尽き)に対する防衛策だったのです。
休養期間中、彼女はただ身体を休めるだけでなく、自ら合同会社Circle of Lifeを設立して「代表社員(社長)」へと就任しました。バックパックを背負って海外を巡り、異業種の起業家と対話し、スポーツビジネスの仕組みを一から学ぶなど、社会人としての視座を急速に広げていきました。公の場で見せた当時の表情は、競技の重圧から解き放たれ、未知の挑戦に対する好奇心に満ちあふれていました。この「立ち止まる勇気」こそが、現在の爆発的なプレーの源泉となっています。