タイラーのディスコグラフィにおいて、ターニングポイントとして燦然と輝くのが名盤『IGOR』です。ラップの比重を減らし、ピッチシフトさせたボーカル、唸るファズシンセ、重層的なコーラスワークを融合させたこの作品は、痛烈な失恋のプロセスを描いた一大シンフォニーとして音楽史に刻まれました。
そして、満を持してリリースされた最新アルバム『CHROMAKOPIA(クロマコピア)』では、30代を迎えたタイラーが直面する「老い」「親密さへの恐れ」「名声とパラノイア」といった成熟期の苦悩が生々しく描かれています。母親からのボイスメモを羅列しながら、ハイエナジーなブラスサウンドと重厚な合唱が交錯する構成は圧巻。商業的なチャート制覇のみならず、現代社会における個人のアイデンティティを問うマスターピースとして絶賛を浴びています。