なぜこの揚げ物に「竜田」という地名が冠されているのか、その背景には日本の古典文学と結びついた風雅なストーリーがあります。
名前の発祥地とされているのは、奈良県を流れる紅葉の名所・竜田川です。平安時代の歌人・在原業平が『ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは』と詠んだように、竜田川は古くから紅葉が川面に浮かぶ美しい情景で知られていました。
肉を醤油で漬け込むことで赤褐色に揚がった部分を「紅葉」に、衣の片栗粉が白く残った部分を「川の白い波しぶき」に見立て、料理人が「竜田揚げ」と名付けたと伝えられています。単なる調理法にとどまらず、器の中に日本の四季を写し取る和食ならではの美意識が息づいています。