平成のテレビ史を振り返る上で、最大の金字塔として君臨するのが驚異的な視聴率を叩き出したメガヒット作品の数々です。ビデオリサーチ(関東地区・世帯)の公表データによると、平成の民放連続ドラマにおいて瞬間最高ではなく「番組平均視聴率で40%の壁を突破した作品」は、わずか3作しか存在しません。
その頂点に立つのが、2013年(平成25年)TBS系日曜劇場で放送された堺雅人主演の『半沢直樹』最終回(42.2%)です。これに次ぐのが、2000年(平成12年)同枠で木村拓哉と常盤貴子が共演した『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』最終回(41.3%)、そして2011年(平成23年)日本テレビ系で松嶋菜々子が感情を失った家政婦を演じた『家政婦のミタ』最終回(40.0%)でした。
なぜこれらの作品は、娯楽が多様化し始めた平成中期以降にもかかわらず、視聴率40パーセント超え真相として記録的な数字を叩き出すことができたのでしょうか。関係者への取材や当時の制作ドキュメントから見えてくるのは、「単なる恋愛や痛快劇を超えた、日本社会の心理的渇望との完全な合致」です。
『半沢直樹』が放送された2013年は、長引くデフレ不況と組織の理不尽に耐え忍んでいた多くの会社員層が、主人公の「倍返し」という徹底的なカタルシスに自己を投影しました。一方の『家政婦のミタ』は、東日本大震災の発生から半年余りが経過した同年秋に放送され、崩壊寸前の家族が痛みを通じて再生していくプロセスが、傷ついた日本社会の無意識の傷口を癒やす役割を果たしたと社会学の観点からも分析されています。