では、平らなフライパンでグリル以上の水分量を保持し、とろける食感を引き出すにはどうすればよいのか。数々の調理実験を経て導き出されたフライパンで焼きナスをとろとろにするコツは、下処理の「切り込み」と「蒸気コントロール」に集約されます。
まず最初に行うべきは、焼きナスの切り込みの入れ方の最適化です。ヘタのトゲを落としてガクの周りにぐるりと浅く包丁を入れた後、ナスの胴体全体に対し、縦方向に深さ1〜2ミリ、幅5ミリ間隔で細かく切り込みを入れます。この筋が熱の通り道となり、皮の張力を分散させて破裂を防ぐと同時に、剥く際のガイドラインとして劇的な効果を発揮します。
そして最大の核心となるのが、加熱時の「蒸し焼き(密閉蓋)」と「差し水」です。強めの中火でフライパンを温め、ナスの表面を転がしながら1〜2分焼いて全体にうっすら焼き色をつけたら、弱中火に落として大さじ1〜2杯の水を投入し、即座にぴったり閉まる蓋をかぶせます。この「水を入れる理由」は、フライパン内部を純度の高い過熱水蒸気で満たし、ナスの細胞壁に含まれるペクチンを急激に熱分解させるためです。
蒸気の力でナスが自らの水分で蒸し上げられ、皮と果肉の組織が綺麗に分離。蒸気を逃さず約6〜8分間加熱することで、外側は香ばしく、内側はスプーンで崩れるほどトロトロの極上仕上がりが約束されます。