動画共有サイトの黎明期、ニコニコ動画では「文字を読む動画」というタグが自然発生しました。掲示板の感動的なコピペ、笑えるスレッド、あるいは「顔が変な人 あだ名集」といった独自のキュレーション動画が有志によって投稿され、初期のインターネットユーザーを夢中にさせました。BGMに『ファイナルファンタジーIV』の「トロイア王国」や『FFV』の「遥かなる故郷」といった叙情的なゲーム音楽を乗せ、黒背景に白文字が流れるだけの動画に、多くの視聴者が涙し、笑ったのです。
この視聴行動の根底には、認知心理学におけるテロップ動画の心理的効果が働いています。人間は視界の中で動くものに対して反射的に視線を固定する生得的な習性(オリエンティング反射)を持っています。静止した本やWebサイトを読む際には「視線を自ら動かす」という能動的な労力が必要ですが、一定の速度で上スクロールするテキストは、視点を固定したまま受動的に情報を脳へ流し込めます。
文字を読む動画がなぜ人気を集め続けているのか、その要因は日常の視聴環境の変化とも密接に結びついています。通勤電車の中や深夜のベッドサイドなど、音を出せない環境下でのスマートフォン利用が日常化した結果、画面上の文字を目で追うスタイルが定着しました。さらに近年の短尺プラットフォームでは、テンポの速い自動音声とともに要点テロップを中央に配置したTikTokテキスト朗読動画が爆発的な再生数を獲得しています。「読む」と「見る」の中間に位置する独特の心地よさが、現代人の可処分時間を捉えて離しません。