長年の臨床心理学および家族関係の知見を踏まえると、シニア期における夫婦生活の維持には、健全な「心理的バウンダリー(自他境界)」の確立が不可欠です。相手の身体を自己の延長として勝手に扱うのではなく、独立した一個人として尊重できているかどうかが最終的な分水嶺となります。
営みを継続することをおすすめできる夫婦: お互いの体調や気分を率直に言葉で伝え合い、「痛いときはやめる」「疲れているときは断る」という選択権が対等に保障されている関係です。行為そのものの成否にこだわらず、終了後にお互いをいたわり合える関係であれば、夜の営みは極めて良質な精神安定剤として機能します。
一度立ち止まり、見直すべき夫婦: どちらか一方(特に妻側)が身体的苦痛や精神的嫌悪感を抱きながら、「妻の義務だから」「断ると機嫌が悪くなるから」という理由で我慢を強いられている関係です。これは親密さの確認ではなく、無意識の暴力(性的モラルハラスメント)に他なりません。このような状態にある場合は、直ちに形式的な性交を停止し、手をつなぐ・マッサージをする・散歩を共にするといった「痛みを伴わないスキンシップ」への転換、あるいは専門カウンセラーを交えた対話が必要です。