治安面での懸念が先入観によるものである一方、住まい選びにおいて冷徹に向き合わなければならないのが川崎市幸区の水害リスクです。幸区は東側を多摩川、西側を鶴見川という二大一級河川に挟まれており、地形の大半が沖積低地で構成されています。
川崎市が配布・公開している最新版の「川崎市幸区ハザードマップ」を確認すると、想定最大規模の降雨(多摩川流域の48時間総雨量657mm)が発生した場合、小向、古川町、戸手、平間寄りの低地エリアにおいて、2.0メートルから最大5.0メートル未満の浸水想定区域が指定されています。これは戸建て住宅の1階天井から2階床上に達する水深に相当します。
記憶に新しい2019年(令和元年)の台風19号では、多摩川の水位上昇に伴い、排水樋管から下水が逆流する内水氾濫が発生し、中原区から幸区の一部道路や住宅街で浸水被害が生じました。この教訓を受け、川崎市上下水道局は排水樋管への電動ゲート設置や逆流防止フラップゲートの増設、雨水貯留管の整備工事を推進。近年ではゲリラ豪雨時における内水排除能力が大幅に向上しました。
ただし、自然災害の脅威をゼロにすることはできません。幸区内で住まいを選定する際は、以下の地理的特性を理解しておくことが生命と財産を守る防波堤となります。
幸区内において唯一の台地部といえるのが、加瀬山(標高約35メートル)を中心とする「南加瀬・北加瀬」の高台エリアです。この一帯は洪水浸水想定区域から外れており、水害に対して強固な耐性を誇ります。一方で、平坦な低地エリアに居を構える場合は、マンションの3階以上を選択する「垂直避難」の可否、受水槽や自家発電装置が地下ではなく地上2階以上に設置されているかどうかの設備確認が極めて有効な自衛策となります。