避難所となった輪島市ふれあい健康センターや珠洲市立緑丘中学校などの体育館に足を踏み入れられた両陛下は、スリッパを脱ぎ、迷うことなく畳やシートの上に正座され、あるいは深く膝をついて被災者に歩み寄られました。
当時の特番インタビューや手記で語られた被災者の証言によると、両陛下は決して上から見下ろすことなく、顔を寄せ合うような距離感でお言葉を交わされたといいます。自宅とご家族を失った高齢の女性に対し、皇后雅子さまはそっと手を重ねられながら「本当にお辛かったですね。お体を大切になさってくださいね」と涙ぐまれながら語りかけられました。天皇陛下もまた「夜は寒くありませんか」「少しずつでも休めていますか」と、避難生活における具体的な健康状態や不安に耳を傾けられました。
居合わせた住民のひとりは報道陣に対し、「自分たちの苦しみをこれほど真剣に、温かい眼差しで受け止めてくださるとは思わなかった。明日からまた前を向いて生きていく勇気をもらった」と涙ながらに振り返っています。マニュアル化された公務の枠をはるかに超えた、純粋な人間愛に満ちた対話の数々は、被災者にとって暗闇を照らす確かな光となりました。