言葉を糧とする作家の家庭とは、どのような空間なのか。関係者によると、林家には互いの独立した個性を尊重し合う風土が根付いている。夫が英文学の神髄や古典の訳業に没頭している間も、妻は自身の関心事や日々の営みを慈しみ、対等な知性的対話を楽しんでいたという。
林望の妻として単に影から支えるだけでなく、一人の自立した個人として夫に対峙する。この相互リスペクトの精神こそが、長年連れ添う中で深められた絆の源泉だ。お互いの領域を侵さず、かつ深い部分で共鳴し合う関係性が、林氏の文章に漂う品格とぬくもりの原動力となっている。