カカオマスに砂糖やカカオバターを加え、何十時間も練り上げる工程を「コンチング」と呼ぶ。19世紀末にロドルフ・リンツによって発明されたこの技術は、微小な粒子を摩擦熱で滑らかにし、不要な揮発性の酸味や苦みを飛ばす劇的な効果を持つ。
だが、長く練れば良いというわけではない。過度なコンチングは、豆が持つ繊細なアロマすら削ぎ落としてしまう。一流の職人たちは、豆の特性に合わせて時間と温度を分単位でコントロールする。この見極めこそが、口に含んだ瞬間のシルクのような舌触りと、複雑に広がる余韻を生み出す極意なのだ。