かつての広電宮島口駅を記憶している旅行者なら、駅を降りてからフェリー乗り場へ向かう際の「もどかしさ」を鮮明に覚えているはずです。車が絶え間なく行き交う道路を渡り、混雑した歩道を縫うように歩く必要がありました。広島電鉄および広島県が主導した「宮島口地区総合整備事業」において、駅舎を約70メートル海側へ移設した最大の理由は、歩行者の安全確保とフェリー乗り継ぎ動線の完全バリアフリー化にあります。
2020年に先行開業した新フェリーターミナルに寄り添う形で整備された現在の駅舎は、巨大な大屋根が駅ホームからターミナル入り口までを完全に覆っています。雨天時でも傘を差すことなく、下車後わずか数十秒で乗船口や隣接する観光商業施設「etto(エット)」へアクセス可能となりました。段差も徹底して排除され、大型キャリーケースを引くインバウンド客やベビーカーを押すファミリー層からも「移動のストレスが劇的に減った」と絶賛を集めています。
現場を歩くと、かつての平面交差による歩行者と車両の交錯が完全に解消されていることが実感できます。観光客の歩行動線が海沿いのプロムナードとターミナル内に集約されたことで、宮島口駅周辺の慢性的な交通渋滞も緩和傾向を見せており、単なる駅の建て替えを超えた「広域観光インフラの再編」としての真価を発揮しています。